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2023年公開の映画『ロストケア』は、高齢者介護をめぐる事件を題材にした社会派作品です。
本記事では、そのモチーフになったとされる実際の事件を整理します。
作品のモチーフとされる事件の概要

2016年に起きた相模原障害者施設殺傷事件を思い浮かべた方も多いかもしれません。
しかし、原作小説『ロスト・ケア』は2013年に刊行されています。
時系列だけを見れば、相模原事件を直接モデルにした作品とは考えにくいでしょう。
映画『ロストケア』は、特定の一事件を再現したものではなく、介護をめぐる現実社会の問題を背景に構築された物語といえます。
構造的な共通点は見られるものの、犯行動機や思想性は大きく異なります。
とくに、“救い”という言葉の扱い方や当事者間の関係性は、実際の事件とは明確に距離があります。
では、本当にモデル関係はあるのでしょうか。
ここからは、時系列と構造の両面から整理していきます。
事件の背景にあった要因
2016年7月、神奈川県相模原市の障害者施設で発生した大量殺傷事件は、元職員による単独犯行でした。
当時26歳の元職員は、過去に施設で勤務していた経験を持ち、障害者に対する極端な優生思想を主張していました。
事件前には衆議院議長宛に手紙を送付し、「障害者は不幸を生む存在だ」といった趣旨の主張を記しています。
背景には、本人の思想の偏り、孤立、精神的不安定さなど複数の要因が指摘されていますが、いずれにせよ“本人の信念”が強く前面に出た犯行でした。
被害者との個人的な関係性はなく、特定の家族事情や経済困窮が直接的な動機ではありませんでした。
動機の中心にあったのは、「命の価値を選別する」という本人の思想そのものでした。
ここが、物語『ロストケア』との決定的な違いです。
一方は“存在そのものを否定する思想”、もう一方は“関係の中で歪んだ救いを信じた行為”でした。
映画との違い・共通点
一見すると、「福祉の現場」「命の選別」「救いという言葉」といった構造は似ています。
しかし、両者の根本は異なります。
相模原事件は、障害者の存在そのものを否定する思想犯罪です。
一方『ロストケア』は、介護の現場で追い詰められた個人が、“救い”と信じた行為に手を染める物語です。
共通するのは「福祉」という舞台設定のみであり、犯行の思想や“命の価値”に対する前提は根本から異なります。
犯行の思想性、対象との関係性、動機の性質は本質的に別物です。
この違いを曖昧にすると、作品理解も現実理解も歪みます。
『ロストケア』は、訪問介護員として働く青年・斯波宗典が、高齢者を相次いで殺害したとされる事件から始まります。
しかし彼は、自らの行為を「救い」だったと主張します。
検察官・大友秀美は、彼を裁く立場にありながら、その背景にある介護の現実、貧困、家族の限界と向き合っていきます。
本作は「殺人か、救いか」という二項対立ではなく、追い詰められた社会の構造を描いた物語です。
だからこそ、この物語は観る者に“答え”ではなく“責任”を突きつけます。
💡原作小説はこちら👇
映画では描ききれなかった“父と息子の内面”は、小説のほうがさらに踏み込んでいます。
まとめ(事実は事実として)
原作小説は2013年刊行。
相模原事件は2016年発生。
時系列上、直接的なモデル関係は考えにくいと言えます。
ただし、社会の中に存在していた“見えない歪み”が、別の形で噴出したという点では、同じ時代の空気を反映している可能性はあるでしょう。
作品は一つの事件の再現ではなく、介護・貧困・孤立といった構造問題を描いたフィクションです。
事実は事実として整理し、物語は物語として読む。
その距離感を意識して読むべき作品です。



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